岡田武史が怒鳴り、悩み抜いた1年間。 JFL昇格したFC今治で起きていた事。
岡田武史オーナーが喜びの色を見せることはなかった。
「ホッとした」と語った後、すぐに言葉をつないだ。
「(来季に向けて)経営面、補強で動き始めないといけない。JFL、J3にあんまり長くいると疲弊するので、できるだけ早く上に行けるように来シーズンは補強、強化に力を入れていきたい」
JFL昇格はあくまで通過点だと強調するように、笑みを浮かべることもなかった。
9つある地域リーグの王者と全国社会人サッカー選手権の上位3チームが集う、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ。1次リーグを勝ち上がった4チームが、千葉のゼットエーオリプリスタジアムで決勝ラウンドを戦った。1次、決勝とも3日連続で試合をこなさなければならない過酷なレギュレーションのなか、四国リーグ王者のFC今治は決勝ラウンド初日から2連勝を挙げて昇格を決めた。
「吉武(博文)監督がいいチームをつくってくれましたし、選手たちも一致団結して、素晴らしいプレーをしてくれたと思っています。今回、オフィスの連中も全員(今治から)来てくれました。これまでチームが勝つためにどうするかを考えて動いてくれたみんなのおかげだと思います。そしてスポンサーさん、サポーターのみなさん、市の方々、いろんな人に助けられて、ようやくみなさんに支持されてきたなという手応えを持っているので、そういう意味では本当にみなさんのおかげだと思っています」
岡田はチームにかかわるすべての人々に感謝の言葉を述べた。
人々の思いに応えるためにも、己に課したJFL昇格のノルマを、何としても今年果たさなければならなかった。不退転の決意だった。
「この1カ月間で、人生を変えてしまわないか」
経営者の道を歩み始めるなか、親交のあるライフネット生命の出口治明代表取締役会長の言葉が岡田の心に強く残ったという。
「『スタートアップした会社の約9割が3年以内につぶれています。でもそのリスクにチャレンジした人が社会を変えてきた。リスクがあるからってチャレンジしなくなったら、社会は変わらないんです』という言い方をされた。俺もそのとおりだと思った。まあ、最初からリスクだなと思ってチャレンジしたんじゃなくて、やってみたら大変なリスクがあるなというのがいつものパターンなんだけど(笑)。でもこうなったら後ろに戻れないし、腹くくってやるしかないから」
しかしながら、現実はそう甘くはなかった。チャレンジを呼び掛けても、チームにも社員にも何か物足りなさが残った。
昨秋、四国リーグを制した翌日に、岡田は選手たちを集めてこう呼びかけている。
「全国地域決勝大会までのこの1カ月間で、人生を変えてしまわないか。人生を変えるってそんな簡単なことじゃない。でもJFLに上がったら君たちの人生は変わるかもしれない。すべての行動を、決勝大会に勝つために捧げてほしい。朝起きたら『JFLに絶対に上がる』と口に出して言おう。言ったところから1分1秒、無駄にするんじゃない」
選手の甘い考えに、岡田は激昂した。
だが仕事の合間を縫って数日後の練習試合に途中から顔を出すと、自陣ゴール前でつなごうとして横パスをかっさらわれたプレーに出くわした。ピンチを招きながら「ゴメン!」「ドンマイ!」と声を掛け合っていた。
納得がいかなかった。ハーフタイムに入ると監督に「申し訳ないが、選手に対して一言だけしゃべらせてもらえないか」と了解を取って、選手の前に立った。越権行為であることは分かっている。ただ、どうしても言わずにはおけなかった。
「冗談じゃない。もし俺が一緒にプレーしていたらあの横パスしたヤツの胸ぐらをつかんで『俺の人生をどうしてくれるんだ』と言っている。何が『ゴメン』だ! 『ドンマイ』だ! お前たちそんな甘い考えだったのか!」
本気で人生を変えようとしているとは思えなかった。
1カ月後の全国地域決勝大会では1次リーグ敗退に終わり、決勝ラウンドにも進めなかった。
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http://number.bunshun.jp/articles/-/827008
J3まで上がってきて儲けさせてほしいw
しかし、60になっても情熱を傾けられるものがあるってことはいいですね。